2026/07/31 カテゴリー: アルバム・歴史

卒業生の皆さまへ――。

本学元学長 浅利昌男先生が、大正時代の貴重な獣医学雑誌の記事をもとに、110年以上前の麻布獣医畜産学校をはじめとする私立三獣医学校の姿を論文としてまとめました。
校長や学生の様子、卒業式の雰囲気など、黎明期の母校を生き生きと伝える記録です。
難解な文語体を現代語に訳した資料も掲載していますので、112年前へ思いを馳せながら、母校の歴史をぜひご覧ください。

 

はじめに

greeting

2015年麻布大学が125周年事業の記念事業の一環として大学が所蔵している獣医学関係書の総目録を編纂(へんさん)し、その監修作業に絶大なるお力をお貸していただいた信州大学農学部名誉教授の家畜解剖学者であり獣医歴史学者でもある松尾信一先生(故人)から私(浅利)に送られてきた大正三年(1914年)の獣医学雑誌の記事のコピーが手元にある。それには今を去ること110年以上前の、大正時代初期の帝都に生まれて間もない私立三獣醫(獣医)学校の一コマの記憶が書かれている。
大正三年と言えば西暦1914年、今年(2026年)から遡って112年前、おそらく公害を知らない東京の澄み切った空の下に、現在の日本の獣医師界を質と量でリードする私立獣医師養成系大学の、若々しく発奮する黎明期の姿があった。東京獣医学校(現在の日本大学生物資源科学部獣医学科)、日本獣医学校(現在の日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科)そして麻布獣医畜産学校(現在の麻布大学獣医学部獣医学科)の私立三獣医学校である。この記事の文体全体が大正初期に書かれた格調高い文語調で、現代に生きる私どもには読解に苦労する箇所も少なからずあったが、本学大学院獣医学研究科出身の猪股智夫名誉教授および日中口述歴史・文化学会の片山兵衛氏の力をお借りしてこれを現代語にしたので、それを通してここに書かれている当時の私立三獣医学校の姿をご覧頂きたい。
これを読み起こすとその当時の生き生きした学校、校長や学生の様子を垣間見ることができる。この記事を掲載している雑誌名は獣醫学雑誌、発行元は獣醫学雑誌社である。現代の(公益社団法人)日本獣医学会の機関誌とは異なる、当時の商業誌であろう。そのひとつは【寄書】『都下三私立獣医学校及び其の校長』のタイトルで著者は礫山人(おそらく業界ジャーナリスト)という方が書かれたもので、もう一つは【叢談】『三大私立獣醫学校の異彩ある卒業式』のタイトルで、著者は通観居士(これも業界ジャーナリスト)という方が書かれている。いずれもペンネームであろう。
獣医醫雑誌の寄書、叢書では当時東京府(市)下にあった3つの私立獣医学校についてそれぞれの学校の校風、校長の人となり(其の一)、あるいはそれら学校の卒業式の特徴を比較しながら書き記したもの(其のニ)で、今となってはわからない112年前の、誠に久しい当時の学校の一面が浮き彫りになっていて興味深い。これを麻布獣医科大学、麻布大学獣医学科を母校とするOBOG諸氏に紹介し、ひととき112年前から今に繋がる母校に想いを馳せていただけたら幸いである。